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Prey-Predator系における能力の進化 - 1. LV方程式の分解をしてみる

目的

Prey-Predator系(被食者-捕食者系)における個体能力の進化のシミュレーションをやりたいのでやってみます.
観察したいことは,被食者・捕食者の能力(逃げる,繁殖,捕食など)がどのように共進化していくか?です.
この記事では,まずそれを考えることができるモデルの設計することを目的とします.

代表的なPrey-Predator系の紹介

Prey-Predator系で代表的なものにロトカ・ヴォルテラ方程式系(参考: wikipedia:ロトカ=ヴォルテラの方程式)があります.これを元に上のことを考えていきたいと思います.
\dot{x} = \alpha x - \beta xy(1)
\dot{y} = -\gamma y + \delta xy(2)
ここで,xは被食者の数,yは捕食者の数です.式1は被食者の,式2は捕食者の増殖速度で次のように解釈できます.


式1の意味(Wikipediaより)

ここで被食者にとって餌は十分あると仮定する。右辺第一項は、被食者が自然増によって、その個体数に比例して増加することを表している。αは増加に関するパラメーターである。右辺第二項は、被食者が捕食されることによって、自身の個体数および捕食者の個体数に比例して減少することを表している。βは減少に関するパラメータである。

式2の意味(Wikipediaより)

ここで捕食者にとって餌は限られた量しかないと仮定する。右辺第一項は、捕食者が捕食によって、自身の個体数および被食者の個体数に比例して増加することを表している。δは増加に関するパラメーターである。右辺第二項は、捕食者が自然減によって、その個体数に比例して減少することを表している。γは減少に関するパラメータである。

それと,この方程式は個体が空間上に一様に分布していて,個体数が非常に多いことを仮定していると解釈できます.前者の仮定によって相互作用を一様に,後者の仮定によって個体数の時間発展は決定論的とすることができます.

モデルの設計?

さて,こんな被食者-捕食者の相互作用における被食者と捕食者の能力の共進化を見ていきたいのですが,微分方程式表現のままでは個体差を表現できません(上の後者の仮定により個体差を無視している).
なので,この方程式を個体レベルへ分解して表現します.それを以下に示します(これは私が特に調べず考えて作ったものでなので,ちゃんと知りたい人はちゃんとした論文を読んでください.下でも書いてますが,ちょっとおかしい点があります).
以下では,「起こること: それの確率(p*,q*)」のように表記します.

被食者の振る舞い

  • 常に起こりうること(pr - pdがαと対応)
    • 繁殖: pr
    • 自然死: pd
  • 捕食者と出会ったときのみ起こりうること(pyがβと対応)
    • 被食(死): py

捕食者の振る舞い

  • 常に起こりうること(qdが-γと対応)
    • 自然死: qd
  • 被食者と出会ったときのみ起こりうること(qeがδと対応)
    • 捕食して繁殖: qe

とりあえず,方程式から素直に分解してみました.ですが,補食者に関してちょっと気持ち悪い点があります.それは,被食者と出会ってないと死ぬばかりで,出会ったときに捕食してすぐ繁殖しているところです.上の振る舞いは(実は)単位時間あたりに起きることを考えているので

  • 捕食できた個体は死亡率が低くなり,繁殖率が高くなる.
  • 捕食できなかった個体は死亡率が高くなり,繁殖率が低くなる.

のように考える方が自然な気がします.たぶん,個体レベルで見ていて,元の方程式ほど大きなスケールで見ていないので,不自然な点が出てきてしまったんだと思います.

ということで

まず能力の進化とかを考える前にこれの解消を目指すことにします.