Prey-Predator系における能力の進化 - 3. レプリケータ方程式を用いた利得行列の検証
これまで
前回(d:id:swarm_of_trials:20080801),ロトカ・ヴォルテラ(LV)方程式ではやりにくいってことで,(個人的に)扱いやすい進化ゲーム理論の枠組みでPrey-Predator系を考えることにしました.
それで,以下のLV方程式に対応させて,定性的に似ている下の表の利得行列を作りました.
(1)
(2)
Prey | Predator | Empty | |
---|---|---|---|
Prey | 0 | -β | α |
Predator | δ | 0 | -γ |
Empty | 0 | 0 | 0 |
()
今回はこれの個体数の変化(Prey-Predator系の振る舞いはLV系っぽくなっているのかどうかを調べたいと思います.
レプリケータ方程式に当てはめる
レプリケータ方程式は進化ゲーム理論による個体数の時間発展を記述することができます(参考: ).
上記の利得行列を当てはめると,下のようになります.
,,,として,
(3)
(4)
(5)です.
xはPrey,yはPredator,zはEmptyの割合です.
振る舞いを調べる
この方程式に適当な初期値・パラメータを与えて数値計算をしました.それを以下に示します.
横軸x(被食者),縦軸y(捕食者)で,赤い線がその軌道です.
(初期値: x(0) = 0.5, y(0) = 0.2, z(0) = 0.3,パラメータ: α = 1, β = 2, γ = 3, δ = 1)
初期値(0.5, 0.2)から反時計回りに振動しながら,外側へ広がっていきます.
最終的には (0, 0) 近傍 -> (0, 1) 近傍 -> (1, 0) 近傍 -> (0, 0) 近傍 -> …の振動状態に安定します.
ちなみには平衡点ですが,の条件下では常に不安定でした.なので,この振動はどこかに収束せず,ずっと続くと思われます.
また,内部平衡点は,に固定して,の範囲で数値計算により安定性を調べたところ,その範囲では常に不安定でした(手で計算しようとしたら,煩雑になりすぎて何が何だかもう..orz).
そのため,ほとんどのα, β, γ, δ()に関する設定で上のような振動が起こると思われます.
LV方程式の振る舞いと比較
LV方程式(式1,式2)の数値計算の結果を次に示します.
(初期値: x(0) = 1, y(0) = 1, パラメータ: α = 5, β = 2, γ = 3, δ = 2)
これも,反時計回りに振動しました.
で,さっきのレプリケータ方程式と比較すると,とりあえずは
被食者が増加 -> 捕食者が増加しつつ被食者が減少 -> 捕食者が減少 -> 被食者が増加 -> …
という振動を繰り返すということに限っては同じような振る舞いをしていると言えます.
(実のところそれぞれの振動軌道はレプリケータ方程式のほうは漸近安定で,LV方程式は中立安定だったり,そのほかにもなんやかんやとかなり違います.)
一応,
これで,進化ゲーム理論の枠組みでPrey-Predator系ができたということにします.
前項目の最後で述べてるように,LV系と似ているとするにはいろいろと問題がありますが,とっととタイトルにある個体の能力の進化をやりたいので,できたということにします (- -;;
ということで,次は進化する個体の能力を考察することにします.
- 次: 進化する能力を考察する: d:id:swarm_of_trials:20080821