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資源量と個体数のダイナミクス - 持続的な発展は可能か? -

はじめに

資源が使われなければ蓄積されたり,使いすぎたら枯渇するようなシステムにおける個体数(人口)のダイナミクスを考えたいと思います.
地球で言えば,エネルギーが太陽などから流入し,それが(例えば石油といった形で)蓄積されています.
消費量が流入量と釣り合っていれば個体数は安定しそうですが,(今の地球のように)釣り合っていない場合が存在し,そのとき個体数は安定になりうるか? ということを考えるのが目的です.

エネルギーが蓄積されない場合は,ロジスティック成長をすると思います.

モデル

資源の量をr,その資源を使う種の個体数をpで表します(r,p \in \mathcal{R}^+).
それのダイナミクスは次のように書けると思います.
\dot{r} = a - crp (1)
\dot{p} = bcrp - dp (2)
a,c,b,d \in \mathcal{R}^+
式1の意味

  • 資源は太陽光などとして,常に一定量の流入があると考えます.そのため資源の増加量をaとしました.
  • 個体が資源を見つける確率はrpに比例します.そのため資源の消費量をcrpとしました.cは一個体辺りの資源消費量です(これは子の産める量にも関わってきます(次の1項目参照)).

式2の意味

  • 一個体が産める子の量は消費した資源の量に比例するとします.そのため個体数の増加量をbcrpとしました.
  • 各個体は一定確率で死ぬとしました.これは寿命のようなものによると考えてください.そのため個体数の減少量をdpとしました.

平衡状態の解析

個体が絶滅するかどうか? などこのシステムの平衡状態について解析します.
このシステムの平衡状態は
 r^* = d/(bc)
 p^* = ab/d
です.この平衡点は常に安定です.
そのため,ここで考えている個体は絶滅はしなさそうです.よかったよかった.

aは外からの流入で,dは寿命なので,この二つは不変だと考えると,この個体はbを増加させることで,それに比例して個体数を増やすことができます.
bとは繁殖に関する資源利用の効率の良さと言えます.なので,資源利用の効率を上げることで,その分だけこの個体は繁栄することができます.
ただし,一般に効率は最大で1なため,b の上限は1です.そのため,ここで考えているようなシステムには,(なにをやったとしても)個体数の上限が存在することがわかります.

ダイナミクスの解析

平衡状態に至るまでの時間発展を調べます.
以下にr,pの数値計算の結果を示します.
f:id:swarm_of_trials:20080905212336g:image
初期値はr = 1.0,p = 0.001,パラメータはa = 1.0, b = 0.7, c = 0.3, d = 0.3です.
\Delta t = 0.01としてオイラー法で計算しました.

最初の段階では,個体数pが非常に少ないため,資源量rは時間に比例して増加していきます( 0 \leq t < 1ぐらい).
しかし,個体数pは資源量rが十分あれば指数関数的に増加するため,しばらくしてから個体数pは爆発的に増加します(t=1近傍).
そうすると,資源の流入(a)より消費量(brp)の方が非常に大きくなるため,個体数の増加と共に資源は一気に減少します.
資源が減少するので,それに少し遅れて,個体数が激減します(1 < t < 2).
その後は,資源の流入と消費の釣り合いのとれている資源量r・個体数pになり,安定します(パラメータによっては細かい振動を何度か経ることがあります).これは前項目で考察した平衡状態です.

まとめ

資源の蓄積・枯渇を考慮にいれた個体数ダイナミクスを考えるために,それを力学系でモデル化し,平衡状態とそれに至る過程を調べました.
その結果,ここで考えているシステムでは,最終的には個体は絶滅せず安定して保たれますが,それに至る前に,

  1. 資源の大量消費による個体数の爆発とそれによる資源の枯渇
  2. 資源の枯渇により個体数が激減

することがわかりました.

(お遊び的に)この結果を我々人類に重ねて考えると,今はちょうど1の段階にいるところでしょうか?
とすると,この後に待ち受けていることは...